「…子供、欲しいか?」
俺とお前の───…。
そんな音色は今までで聞いたことないくらいに一番柔らかかった。
「え……、」
震える。
声が、震える。
「お前が望むんなら、俺も…欲しい」
聞き間違いかなって不安は、すぐに溶けてしまった。
「……こ…ども…?」
「あぁ」
考えたことが無いと言えば嘘になる。
何度も何度も考えた。
けどそれはとてもじゃないけれど1人で抱えるには大きすぎる。
小さくて、柔らかくて、あたたかくて。
力の加え方すら分からなかった。
「こ…ども……?」
「あぁ」
何度も何度も同じ質問を繰り返して、同じ回数同じ言葉で返ってくる。
「わたしは、…私は…」
「言わなくていい。それでも俺は思っちまったんだよ」
“母親”というものが分からなくても。
小さな頃与えられるはずの当たり前の愛情を知らずに育っていたとしても。
それをいつか自分も同じようにしてしまうのではないかと、心のどこかで怯えていたとしても。



