しーんと沈黙が流れる。
そんな瞳は今にも泣きそうだが、再びきゅっと腕に力がこもった。
「ふっ…ははっ、くくっ、多分ってなんだよ。どこで謙虚さ発揮してんだ」
笑わないで、本気だよ───。
そんな瞳が合わさると、どうにも嬉しくて梓の腕を引いて歩き出す。
「そういうこった。もう声かけてくるんじゃねえ。てめえなんざに俺は勿体なさ過ぎる」
「なっなによ…!!そんな女のどこがいいってわけ…!?」
「別にわざわざ言うことでもねえよ。俺達が知ってりゃいいんだ」
「ちょっと…っ!!」
「迷惑だっつってんだろ。それか本当に腹切りてえか?
女だとしても容赦しねえのが俺達だぜ」
睨みを効かせれば、女はそれ以上声をかけようとはしなかった。
まさかこいつがあんなこと言うたぁ。
近藤さん、やっぱいい女だよ梓は。
俺には勿体ないぐらいな。
けど、これぐらい言える奴じゃなきゃあ俺の嫁は務まらねえだろ?
「それから、」
少し振り返る。
「あと5年だ」
「…5年…?」
「てめえなんざ相手にならねえほど、こいつを磨いてやるよ。俺が」
いや、5年は言い過ぎたか。
2年で十分だ。
知らねえだろ、この女はまだほんの13歳のガキだったんだ。
捨て犬みたいに毛布にくるまって。



