女は余裕そうな笑みを浮かべ、舐めるように梓を見つめた。


俺を掴む腕は震えている。

それでも引き下がろうとしない。



「あなたのせいで彼の評判も下がるのよ?」


「わ、わかってます…」



純粋に様子を見たいと思った。


こいつがここまで誰かに楯突くのは珍しい。

それも自分より年上の女相手になど。



「正直、あなたじゃ物足りないと思うわ」



貧相だし魅力無いもの───。


この女…んなことねえよ。
こいつのが明らかに可愛いだろうが。

「ふざけんな人の嫁侮辱するのも大概にしろ」と、言いたかったが。


俺の腕をぎゅっと掴みながらも梓はまっすぐ女を見つめているから。



「でも…歳三さんは私を選んだので…っ、だからもう迷惑かけないでください、次声かけたら……」


「なによ?」



負けんな、引き下がるな。
言いたいことがあるならちゃんと言え。

てめえはもう言葉を飲み込んで隠すようなガキじゃない。


俺達が、新撰組が───俺が認めた女だ。



「せ、切腹…っ、次声かけたら土方 歳三の小姓として妻として───…あなたに切腹を命じますから…!」


「なっ…!あなた物騒よ…!!私は女よ!?なにを言ってるの…!?」


「それが私達ですから…!!それを物騒だと思うのならあなたはこの人の隣には立てません…!!………た、多分」