土方side




「あら、あなたは!」



生ぬるい声に思わずため息と舌打ちが漏れた。

天気も良いし近くの原っぱにでも行こうかと、梓を連れて町へ団子を買いに来ていた矢先。



「奇遇ですねぇ」



その女はまるで俺をずっと探していたかのように、すぐに駆け寄ってきた。

しつこい女は嫌いだ俺は。
というより眼にも入らねえ。


しかも隣には梓が居るっつうのにどんな了見だ。



「あら、妹さん───じゃなかった奥さんだったわね」



手に抱えていた団子を落としそうになった梓は、唇をきゅっと噛んでいる。

譲っちまうのか、てめえはまた。



「どこかへお出かけかしら」


「てめえに話してどうなる」


「近くの原っぱに行くんです」



こいつ…答えやがった。


梓は目をぎゅっと閉じ、パッと開いて女を見つめた。

どうにもそんな姿に俺の中で歓びに似た感情が生まれる。