ぱぁっと明るくなる顔が、彼の瞳の中に映って見えた。

それでもどうしてか胸ぐらの腕は外されない。

思わず首を傾げた私に、土方さんはふっと笑う。



「わっ───んっ…!」



ぐいっと引き寄せられ、ちゅっと響くリップ音。

それはあのときには無かったもの。

形が変わったからこそ、新しく出来たもの。



「ひじかたさんっ、これから夕飯の支度なのっ!」


「あとでいい。まずは仕置きだ」


「し、仕置き…っ!?厠の掃除とかならやるよ…っ!」



ひょいっと抱き上げ、軽々と寝室へと向かって行くその人。


ポカポカと叩いても全然効かない。

それどころか少し笑っているようにも見えた。



「今日で2度も泣かせやがって。やられたらやり返さねえと気が済まねえんだよ」


「2度…?1回しか泣かせてないよ…!それにもう十分…っ、私だって今にも泣きそうなの…!」


「おう啼け啼け」


「なんか違うよ…!」



そんな私達を見て笑う人達はもう居ないけど、それでも確かにここにはあるから。


土方さんじゃなく、歳三さん。
時折 梓じゃなく、土方 梓。


この先も彼は必ず私の隣に居てくれて、「おかえり」って言ってくれて。

「帰るぞ」って、言ってくれる。



「んんっ…!まって歳三さん…っ」


「言葉で分かんねえってんなら身体に叩き込んでやらねえとな」


「ひゃぁ…っ」



そして私の腕を無理矢理にでも掴んで、きっと引き摺り出してくれるから───。