そこは殺風景な部屋。
あまり物だって置いていなくて、地味な箪笥があって机があって、その上にはたくさんの書類が乗っていた。
「俺だって簡単にお前の命を預かってねえんだよ。
お前が俺に命を預けたように、俺の命だってお前に懸けたんだ」
そこには必ず硯と筆がセットで構えられていて。
壁にかかった浅葱色の隊服、傍らには刀が2つ。
それが新撰組副長───土方 歳三の部屋だった。
「よぉく頭に叩き込んでおけ」
「は…ぃ…」
「聞こえねえ」
「はっ、はいっ!」
ここに“土方さん”が居る。
彼はいつだって変わらず私の隣に居てくれる。
それがどうしようもないくらいに、泣きそうなくらいに嬉しかった。
そうして説教が終わると土方さんは必ず言うのだ。
『戻ってよし』
って。
それが終わりの合図。
それ以上叱ることも無いし、それだけで空気が少しだけ和らぐから。
だから私はずっとその言葉が出るのをいつも待っていたりして。
「───よし。」
同じように彼は微笑んで、そう言った。



