懐かしい感覚だった。
それはなんとも久しぶりの感覚だ。
胡座をかいて腕を組む副長、向かい合うように正座をする“時折 梓”。
彼の説教のスタンスはいつもこういう形だった。
「まず、てめえが思ってたことを逐一吐け」
「は、はい…」
そう、この感覚だ。
目の前の瞳が見れないから、いつも袴をぎゅっと握っていたっけ。
なにか言われそうな雰囲気が出る度に肩を揺らして。
鬼に食べられる寸前の子犬。
そんな2人を見て沖田さんはそう言っていた。
「も、もしかしたらいつか私よりも土方さんのことを好きな方が現れるかもしれないと……そう思いました…」
「それで?」
「そしたら、やっぱり土方さんもずっと独り身ってわけにもいかず…」
チラッと見つめれば案の定、眉間は寄っている。
…すぐに見なかったことにした。
「お前の気持ちは他の女に負けちまうようなその程度だったってことか」
「ちっ、違うよ…!!」
「続けろ」
これは明らかに尋問、彼のお得意のもの。
この人に尋問をされて情報を吐かない人は居ないと、隊士さんは言っていた。
だからもう正直に言うしかない。
隠したって仕方がない。
「ひ、土方さんの幸せは私の幸せなので…っ、土方さんの命は私のものなので…!
だから、私が最後に望むことは……それしかありませんでした…」



