出産……。
それは自分から一番遠いもののようで、そうでもなかった。
その出来事は私に命の重みと尊さを教えてくれたから。
あの新生児のぬくもりは、今もしっかりこの腕に覚えている。
そのときも隣で支えてくれたのはこの人で。
だからこそ知っている───出産は命懸けだと。
「つまり…それは…」
「お前の先祖が無事に産まれたっつうことだな」
先祖が先祖を産む…。
考えれば考えるほどに頭が混乱するけど、それはなんとなく的を得ているような気がして。
それでもまた1つ安心が増えたということにもなる。
着々とこの時間は、未来へ1歩1歩進んでいるらしい。
「よ、良かった……一安心だね…」
嬉しいはずなのに、喜ぶことのはずなのに。
だらだらと冷や汗が流れるのはどうしてなんだろう。
「か、帰ったらお説教ですか…」
「よく分かってんじゃねえか。何ひとつ通用しねえ言い訳でも考えとけ」
「は、はい…」
心当たりしか無い。
私は土方さんを泣かせてしまい、かなり怒らせた。
それは怒らせるようなことを私が言ったから。
素敵な人が今後現れたら一緒になってくれて構わない───と。
そこまではっきり伝えていなかったとしても同じことだ。
「帰るぞ」
「はい…」



