雨が、上がった───。
太陽が顔を出した。
キラキラと濡れた木々が輝き、屋根から水滴がポタポタ落ちている。
長い通り雨のようなそれは、まるで嘘だったかのように晴天へと変化していた。
「起きろ、梓」
どれくらいこうしていたか分からない。
そのあと自分に起こる異変に怯えつつも、彼の胸に顔を埋めていた。
でも、すごくいい夢を見ていたような気がする。
頭上からの優しい声に目をゆっくり開けば、同じくらい優しい顔をした人に迎えられた。
「おかえり」
頬に触れた温かさを感じられる。
スルッと抜けてしまわない風をしっかりと身体で受け止めることが出来る。
「た、ただいま…」
「ったく、ヒヤヒヤさせんじゃねえよ」
「……消えて……ない…?」
体は透けていない。
汗も引いている、呼吸も苦しくない。
普段のいつも通りの私。
少し着物は湿っているけど、今はそんなこと気にならなかった。
「あの咲とかいう娘に命の危機があれば、お前も危険になるんだったな」
考えるように呟きながら私の体をゆっくり抱き起こす土方さん。
コクコクと頷く私に、そのまま続けられた。
「…出産も当てはまるんじゃねえのか」



