『必ず、俺が引き摺り出してやる』
パチパチと瞬きをし、真っ直ぐに俺を見つめた梓。
『だから…早く俺の元へ帰って来い。勝手にこの場所に戻ろうとしてんじゃねえよ』
その頬を優しく撫でて、俺はまた抱き締めた。
夢なんだろう。
どうせこれは都合の良い夢だ。
だからこそ、こんな時くらいはいいだろう。
この歳のこいつにはあまり優しくしてやれなかったんだ。
『……ふ、』
梓は少しだけ笑って、小さく消えそうな声で言う。
『どこかで……会ったことがあるような気がする…』
必ず迎えに行く。
俺がこんな地獄からお前を救う。
『いいか、お前は俺について来い』
『…どこに…?』
『…幸せな場所だ』
お前が手を伸ばせば俺は掴んでやると今までは思っていたが。
手を伸ばさなくたっていい。
お前がいるなら俺は、無理矢理にでも掴んでやる。
『…お兄さんは、誰なんですか…?』
『誰だと思う?』
『ぐ、軍隊の人…?コスプレとか……それとも俳優さんとか…ですか…?』
消える寸前。
俺はそいつにふっと笑って。
『お前を一番に愛してやる男だ』
と、言ってやった。
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