『ど、どちら様ですか…』
そして梓もまた、俺のことが見えているらしい。
その声は確かに初めて会ったときと同じだ。
か細くて、だけど女々しくない声。
耳にスッと入ってくる音。
『痛かったろ』
『…痛く…ない』
『嘘つけ、お前は意外と泣き虫なんだ。そんで本当は怖かったんだよ』
腕を緩めてそいつをじっと見つめる。
梓も同じように俺を見つめ、変わらない仕草で首を斜めに傾けた。
『誰の話をしてるの…?』
『…お前だっつうの』
小せぇ…。
こいつ、こんなに細くて小さかったのか。
出会ったばかりの頃はそこまで気にしていなかったが、もっと優しくしてやれば良かったと後悔も生まれた。
『どうして…泣いているの……?』
少女は俺を心配そうに見つめ、ゆっくり伸ばされた震える小さな掌が頬に触れた。
変わってない、こいつの温かさはこの時からちゃんとあったのだ。
『な、泣かないで、どこか痛いの…?苦しいの…?』
それはてめえだろうが馬鹿。
なんでお前はいつもそうなんだよ、お前だって生きてんだろうが。
人の心配ばっかしやがって。
『てめえは本当に…』
そんな小さな掌をぎゅっと握る。



