『社会のゴミがっ!!てめえみたいな孤児はなぁ!この先も終わってんだよ!!!』
『行き着く先なんか体売るくらいしかねーんじゃねーの!?まぁお前なんか誰も買わねぇだろうけどな!!』
『気持ちわりーんだよ!!親に捨てられた分際で学校来てんじゃねーよ!!生きてんじゃねーよ!!』
ゲホゲホと、そいつはただ咳き込むだけだ。
俺はただ唇を噛んで拳を握ることしか出来なかった。
助けて抱き締めてやることも、そいつらを蹴散らすことさえ出来ない。
(これが…こいつの見ていた世界か)
こんなモン知らなくていい世界だ。
知るべきじゃねえ。
ふざけんな俺の女に何してんだと言ったとしても、聞こえちゃいない。
俺は思わず傍にあった丸い円錐形をした、たらいのようなものを蹴った。
ガゴッ───!!
まさかその音だけは響いてくれるから。
『やべえバレたか!?』
『逃げるぞ!!』
物音に気付いたガキ共はすぐに逃げて行く。
『ごほっ…げほっ、』
踞ったそいつは少しして、また咳き込んだ。
そしてゆっくり体を起こしてポツリと呟く。
『…今日は…早く終わった』
もう見えていようがいまいがどうでも良かった。
駆け寄って手を伸ばし、腕の中に引き寄せる。
───…触れる。
こいつにだけは、どうやら触れるらしい。
それはただの錯覚かもしれないが、ちゃんと感触が腕に残ってる。



