「お前はここで生まれたんだ。新撰組で生まれた“時折 梓”なんだよ。そんで今は“土方 梓”だ」
私の人生の歯車が動き出したのは、明確に言えば14歳からだった。
近藤さんと出会って初めての誕生日を迎えたあの日から私の人生は動き出した。
それまではずっと自分がわからないままで。
あのときから私はここに居るんだって、生きてるんだって少しずつ思えるようになって。
「消えるわけねえだろう。てめえが消えたら誰が俺を毎朝起こすんだ」
「…寝坊しちゃ駄目だよ。ちゃんと稽古行かなきゃ苦情来ちゃうから…」
「だったら俺の為に消えるな、お前が傍に居ねえと真っ暗だっつったろ。
お前は俺を追いかけてりゃいいんだ、それだけでいいんだよ」
そうすりゃ俺は必ずお前の手を掴んでやる───。
鼻を啜る音がした。
声も震えているから、私は土方さんをまた泣かせてしまったんだと。
それでもそんなこと出来るのは私しか居ないんだろうなって。
少し嬉しかったりもした。
「───…大好き。歳三さん……だいすき」
縁側に2人寝そべるように、ただじっと大好きな腕の中で目を閉じる私は。
とても穏やかな顔をしていたように思う。
雨なんか吹き飛ばしてしまうくらいに。
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