「はっ、…はっ、」



ほら、息苦しくなってきた。

冷や汗から熱いものに変わってきちゃったし…。


そんな様子に気付た土方さんは、着流しの上に羽織っていた羽織を私にかけた。



「言ってるそばから風邪引いてんじゃねえか」



そう言って、彼は微笑む。

コクコクと笑顔で頷くことしか出来ない。今は笑顔でいたい。

そんなことを思ってしまう。



「寒いか?もっとこっち来い」


「…だいじょう、ぶ…」


「…俺が寒ぃんだ。いいから来い」



ぐいっと引き寄せられてしまうと、余計に嫌な鼓動が激しくなる。

この感覚は1度だけ味わったことがあったから、よく覚えていた。


ビー玉を握り締めて1人の女の子を探す為に全速力で走ったっけ。

どんどん体は透けていくから。


消えたくないって……そう思って。



「歳三さん……今日はね…山菜ご飯にするよ…、」



これは風邪じゃない。



「あと、沢庵……たくさん漬けてあるから、いっぱい…食べてね、」



風邪なんかじゃない、と。

寄りかかるようにしてポツポツ呟く私に、彼は目を見開いて見つめた。


どうやら察してしまったらしい。