別れというものは突然やってくるものだ。


だからこそ心の準備すら出来ないから、やりきれない。

そんな気持ちは今まで何度も何度も味わってきたはずだった。


そしてどうやら、今回は私の番みたいで。



「歳三さんっ。ここにワラビがたくさんあるよ!」


「そこ斜面になってる。転ばねえようにしろよ」



近所の山は山菜が採り放題。

1人で暮らしていた頃は、呉服屋のおじさんから「女の子1人じゃ危ないから」と言われていつもお裾分けを貰っていたから。


今日初めて、土方さんと一緒にそんな場所に来ていた。



「こんなにたくさん…。近所の人にもお裾分け出来るかな」


「魚屋の息子にゃ要らねえぞ。やるなら親父にしとけ」


「え、どうして…?」


「…あいつはお前を狙ってやがる」



半ば探検のような機会。

秋の始まり、色が変わり始めた木々が山を彩って。


洞窟のような場所を見つけたり、小さな洞穴を見つけたり。

たくさんの山菜をカゴに詰んで、なんのお料理にしようかなぁなんて考えていた帰り道。



「雨降りそうじゃねえか。急ぐぞ」


「うん」



土方さんの手に引かれ、だいぶ急斜面は下っては来たところで。

曇がどんよりと太陽を隠して影を作る。

山の中はどんどん暗くなってきてしまった。