「懐かしいな」
湯上がりの頬に当てられたガーゼを見つめ、その人は少しだけはにかんで言った。
あれから覚えてない。
ふわふわした感覚でふわふわした中歩いて、ふわふわした道でふわふわしながら帰宅した。
その間ずっと土方さんに手を引かれて、その熱がいつもより熱かったのは覚えている。
そしてずっと無言だったのも。
帰宅すれば土方さんはすぐに湯を炊いてくれるから、ぼーっとしながらお風呂に入った。
「…私も、久しぶりな感じする」
えへへ、と笑ってみせる。
初めてあなたに出会ったとき、同じように頬にはガーゼが当てられていて。
「死んだんです」なんて言って。
「この人とは関わりたくないって…思ってた」
人を物みたいに言うし見た目とは裏腹にすごく乱暴で、嫌だなぁって純粋に思ったっけ。
そう伝えればその人も、
「奇遇だな。俺もだ」
なんて言うから。
確かにあのとき、野良猫を拾ってくる沖田さんの方がマシだって言ってた。



