どんなに自分を犠牲にしてまでも、そこにどんな痛みがあろうが哀しみがあろうが。

それでも誰かを救う。


俺達はいつもそんな中を生きていた。



「意味が分からない…!誇りってなんだ…!誠って、なんだ…!」


「それが武士だ」


「っ…、」



怖くないわけがない。

何度自分を責めたかすらもわからない。

それでも俺達に全て懸けて命を預けてきた仲間達はみんな、最後まで笑っていた。


そこには紛れもなく揺るぎない愛情があったからだ。



「てめえのそんな薄っぺらいモンを愛等とほざくんじゃねえ。
───…命っつうのは重いんだ」



男は途端に泣き出し、俺も刀を鞘にしまう。


俺はもう副長でも指揮官でもない。

今は戦場を走る武士でもなく、てめえらと何ら変わりないただの町人だ。



「2度とこいつに近付くな。次は確実に無いと思え」


「ひぃぃぃっ…!!」



男は這うように逃げて行く。


既に外は暗く、部屋には行灯の明かりすら付いていない。

目が慣れない限りよく見えない程だとしても、横たわった女の惨い姿はすぐに分かった。