「さて、本日はどなたの遺品をご覧になりますか。」

一通り舘について話終わったので、唯人さんはもう一度私に尋ねた。

いつの間にか手の震えは収まっていた。



「私は、夫の遺品を見るためにこちらへ来ました。」




「わかりました。それではここの書類にサイン、差し支えなければ理由、そして遺品の持ち主についての情報をご記入下さい。」

「…はい。ありがとうございます。」

唯斗さんは私にボールペンのような物を差し出した。





ーー私の名前は、近藤 静子。
今年で40歳になる。夫と結婚したのは21歳の時。
23歳の時に子供を産み、娘は現在高校生。そして、夫が交通事故で亡くなったのは4年前。
こうして夫の遺品を見に来るのは、実は4年目にして初めてだ。


名前や色々な情報の記入が終わり、唯斗さんに書類を渡す。

彼は私の書類を見て、1つ質問をした。

「…なぜ、4年経った今、遺品を?」

書類には、夫が亡くなった日付を書く項目があった。

私は核心をつかれた気分がした。背中にひんやりとした汗が流れる。部屋は涼しいというのに。

唯人さんはそんな私の様子をみて少し慌てて、
「いや、すみません。配偶者が亡くなると、すぐに遺品の確認に来る方が多いので。4年も経った今、どうしてご覧になろうと思ったのか気になってしまって。」と私に言った。



ーーそう。私には4年もここに来る勇気が無かった理由があるのだ。