「蝶々結びが下手っぴな佐脇(さわき)クンに告げます」


「──なんでしょう」


不服そうに眉を歪めて振り向いた佐脇が、パシャンと水溜まりの端を踏んづけた。


“ ヤ ッ チ マ ッ タ ”


そんなふうに動く、唇。


「……まぁ、紐が解けてなくてよかったね。うん。紐まで冷たいのより、全然マシじゃないかな」


「慰めのつもり?下手っぴだね」


藍。アイに滲み出す、靴。踵の背もたれにあたる部分の生地。詳しい名前は知らないけれど。


「皮肉って言うんだよ、佐脇クン」


「てかなんで、呼び捨てじゃないの」


佐脇は静かに。揺らいでいる、もう一つの狭い世界の中心に、爪先から順に降り立った。