ちがう!
ちがうよ。カホ。
俺は、なんて言えば良いのかわからず、たまらなくなってもう一度カホを抱きしめてカホの唇をキスをしてふさぐ。
カホは、一瞬ひるんで抵抗しようとしたが、徐々に力が抜けて俺の唇と舌を受け入れる。
長い長いキスの後、ようやくカホは、落ち着く。
ゆっくり離れて、見つめ合う。
カホの目からハラリと涙が落ちる。
カホが勇気を出して言ってくれたことが痛いほどわかる。
結局、自分はその勇気を延ばし延ばしにして曖昧な態度を取っていた。

俺はカホのおでこに自分のおでこをコツンとぶつける。
「ごめん。ホントごめん。」

俺は、カホのその濡れた眼を真っ直ぐ見つめて言う。
「………どうしていいか、わからなかったんだ。ずっと今の今まで俺の片思いだと思ってた。」
「…………………どうゆうこと?」
俺を見つめるカホの瞳からは、まだ涙が溢れて、かすかに唇を震わせている。
「…カホ。」
「………………。」
「俺も好きだ。お前のことが。」
「うそ」
「嘘じゃない。」
「じゃあ、なんで。。。」
「俺なんかおまえにはふさわしくないし、あり得ないって思ってた。
 しかも、お前幼馴染の彼氏がいるって言ってたじゃねーかよ。」
「…………いたけど、別れたよ。」
「えあ、なんで?」
「私はずっと東京で働きたいし、彼は地元を離れられないし、このままでいいのかってお互い思ってたから。」
「いつ?」
「もうだいぶ前だよ。仁さんのとこ行く頃には別れてた。」
「…………マジか?」

カホはぐすんと鼻をすすって、目をこする。
「ずっと前からなんだかよくわからないけど、高岡さんのこと気になって…高岡さんはいつも私のことかわいがってはくれるけど、それはいちスタッフとしてで。 私は、高岡さんに子ども扱いされる度になんだか腹が立って。。。。
でも一緒にいると楽しいし。。。」
「………………。」
「それに高岡さんは何だかんだ言ってモテるし、女優さんやよしのさんとかいろんな噂がたくさんあったし。」
「そんなんデマだって!」
「でもお姉ちゃんと遊ぶの大好きだし。 風俗だっていっぱい行くってラジオで言ってるし。 何が悲しくてこんな人がいいのかって思って悩んだり。」
俺はガクッとうなだれる。
「でも、もう、お仕事で会うこともなくなったし、このまま諦めようって思ってたのに………。」
「…………。」
「高岡さんはずるい……。」
「………………。」
「…………でも、好き。」
「………こんな情けねえオッさんのどこがいいんだよ。」
俺は吐き捨てるようにカホから目をそらして言う。自分の不甲斐なさにヘドが出そうなくらい凹む。
カホは、俺の首に飛びついて
「全部っ。 そおいう情けないとこも好きっ。」
俺は苦笑してカホの身体を受け止める。きゃしゃでしなやかなカホの暖かい体温を感じて、やっと実感が湧いてくる。
「もの好きだな。」
俺はカホをキツく抱きしめ返す。
もう、離さない。
「もう泣くなよ。ごめん。もう会わないとか、そんなこと言うな。」
俺は、カホの頬を手で包み、溢れたなみだを指ですくう。
カホの目をまっすぐ見て言う。

「どうしようもないくらい好きだ。 愛してるよ。」
やっと言葉にして自分の気持ちを吐き出して、俺の中の獣が息を返したように彼女を欲しがる。
カホは嬉しそうに泣き笑いをする。
「ホントに?」
か細い声でカホはそう聞く。
俺は答えるかわりにもう一度カホの唇を奪い、激しく濃厚な口づけを交わす。
彼女もまた俺に身体を預け、もっとと俺を欲しがる。少し震えてため息のような甘い声をカホが漏らす。
俺たちはもうお互いを求めることに歯止めがきかなくなる。