除夜の鐘を露天風呂に浸かりながら聞いて、ま、なんか良い年になるだろ。
ちと前向きな良い気分になって、部屋に戻ると、暗い部屋で、カホがテーブルに頬杖をついて年が明けた番組を見ている。
その浴衣姿の斜め座りがこれまたそそる。
ヤバい。制御してたものがふつふつとまた沸き上がってきてしまうではないか。

「寝たんじゃないの?」
「また、入ってきたの?」
言葉がかぶって、カホはふふっと笑って、それから言う。
「明けましておめでとう。」
「…………おう。おめでとう。」
俺は目をそらしてカホの隣に座り缶ビールをもう一本プシュッとあける。

俺は無言で、ビールを一口飲む。

カホはまたテレビに眼を向けて
「明日、初詣行く?」
「もう、今日だよ。」
「高岡さんだってあんまり周りの人にバレなかったね。」
「オーラ無いからな。」
「あるよ。変装が上手なだけ。みんなどこかで見たことあるけど、誰だっけ?っていう顔してた。食堂の女の子とかさ。」
カホは、屈託なく笑う。
くっそ、かわいい。
俺の胸は無駄にうるさく打つ。
俺は無意味に、タオルで長い髪をゴシゴシ拭く。