「あの、もしかして、今日はあの女優さんとか彼女とか来る日だった?」
カホは急に心配そうに俺を見る。
「え?」
「やっぱり、私なんかもうここに押しかけちゃまずいなって思ってて。高岡さんの誕生日だし、彼女と過ごすんじゃなかったんですか。」
「…………そんなん、いないよ。」
この部屋には、考えてみたら、カホ、お前しかあげたことがない。

「ええ、じゃあよしのさんは?」
「昨日一緒に飲んだな」
「へええ。やっぱり仲良いんですねえ。」
俺は、意味のわからない苛立ちを感じる。

「高岡さん、お寿司だったら食べられる? 」
カホは、青山にある小さな手毬寿司の折をあける。
「お誕生日って言ってケーキって言っても、二日酔いだとゲンナリだし、、これだったらいいかなあって思って。」
「ありがとう。」
カホは、どうして俺にこんなことをしてくれるんだ。
俺は切ない気持ちを飲み込むように、炭酸水をもう一杯飲み干した。