撮影終わりに、スタッフや何人かの演者と飲みに行こうと誘われて行った店に、嶋崎仁が業界関係者と打ち合わせで隣の個室で飲んでいた。
中盤は合流して、映画業界とファッション業界の交流会みたいになる。
嶋崎仁の顔を見て、俺は久しぶりにカホの事を思い出す。
元気にしてるんだろうか。楽しく働いているんだろうか。

また、お父さんみたいって言われちゃうな。俺は自嘲して、打ち消す。
嶋崎仁は、ビールのグラスを片手に俺の横に座ってきた。
「あ、どうも。いつも相方がお世話になってます。」
カドは、あれから定期的に嶋崎仁のショーのMCをやっている。
「こちらこそ。それよりぼく前にも言ったけど、高岡さんにも僕のショーに来て欲しいんですよねー、ホントに。」
「すんません。映画の仕事がビッシリ入ってしまいまして。」
「すっかり売れっ子だなぁ。いつか二人で出てくださいよ。」
「いや、そう言ってもらえるとありがたいす。嬉しいです。」
俺は、ビールをひとくち飲む。
なんか、やっぱりすげーかっこいいな。。。
「今日だって、高岡さんの私服、オシャレだし。ファッション興味ありますよね?」
「はあ、まあでももう昔の古着ばっかりで。仕事は衣装だし、あんまり買い物行ってられないですからね。だから、それこそ今はスタイリストさん達が選んでくれたのを買い取ったりすることがほとんどですよ。」
嶋崎仁は、微笑む。
「カホの言う通りだ。」
俺は内心ドキッとする。
「え」
「高岡さんは、ちょっとシャイで謙虚ですごく真面目でいい人だって。」
「…………買いかぶりです。」
アイツは、何をペラペラと俺のことを喋ってるんだか。
「カホと仲良いんですか?」
「え?………いや、もう担当外れてからだいぶ経って。連絡とってないですよ。」
なんだよ、手ェ出したかとでも言われているようで、ちょっとカチンとくる。
「ふううん。」
「仕事、ちゃんとやってますか?」
「え、あ、はい。彼女には夢があるから人一倍頑張り屋さんですよ。」
「そうですか。若いのに、ちゃんと目標があってそれに突き進むってすごいですよね。俺がその歳の時なんてなんも考えてませんでしたよ。」

「もし、良かったらカホに連絡とってあげてください。」
「え?」
「高岡さんと前みたいに話したいみたいですよ。 忙しいかなと思って遠慮してるみたいです。」
「・・・・・・・。」
どういう意味だよ。。。それって。