不細工芸人と言われても

風呂まで貸して、きゃしゃなカホの身体には大きすぎる俺のティーシャツに短パン。
ノーメイクでそんな格好をしているとますます幼く見えて、本当にちっこい弟みたいだ。
けれど、俺の胸は、なんでこんなに早く打っているんだ。
いつもの透き通るような白い肌が少し火照って、そのまま抱きしめたら温かそうだ。
すごくセクシーなわけではないのに、なぜか俺のエロ心をくすぐってくる。
ヤバい。カホが可愛すぎるんだよ。

なのに、カホは、まるで女友だちのうちに泊まる感覚で緊張感もなくリラックスしている。
無防備すぎるんだよな。俺だからか?それとも、誰に対してもこんな感じなのか?
そしてムクムクと大きな不安が湧き、ついまた説教を垂れてしまう。

「お前は、ちょっと無防備過ぎやしないか?
今度から男のモデルが沢山いる職場に行くんだろ。
いくら停電したからって、泊まってけと言われてホイホイついていくもんじゃないぞ。」

カホは、少しむくれて
「自分が泊まっていけって言ったくせに、どうして怒られるのよ。
しかも、大丈夫って言ったけど、カホのボロアパートは、この風だと吹き飛ばされかねないとか脅してきてさ。」

ああ、ホントにそうならねえかな。
で、住むとこなくて、俺のとこ来る?って言いたいな。
さすがに、神様はそこまで俺の良いようにはしてくれねえか。

「高岡さん?」
「え、あ、いや。」
妄想してる場合じゃねえな。
カホは、ムッとして
「じゃあ、やっぱ帰る。」

俺は慌てて
「ごめん。ごめん。 お前見てると心配になるんだよ。」

「私は、ソファ借りるからね。高岡さんはちゃんと今度はベッドで寝てね。」

「…………いーよ。俺がソファで寝る。」
「ダメだよー。高岡さんは、ベッド。」
俺の背中を押して、寝室へ追いやられる。
ベッドの前まできたら、お決まりのごとく押し倒してやる。
そうだよ、彼氏がいたって構わない。この場で奪い取ればいい。
………………という勇気もなく。

カホのにこやかな微笑みで「おやすみなさい。」と言われて、素直に「おやすみ」と答える自分。
パタンと寝室の扉が閉じられて、俺はうなだれる。
なんで、こうなるーーー。


ええい、もう知るか。
結局ふて寝するしかない。
ドアを隔てて向こうにいるカホは、もう安心しきって眠りについているに違いない。