俺の部屋にカホがいる。
寝室でベッドに寝転んでいると、キッチンの方からいいにおいがしてくる。
俺は、マジで夢を見ているんじゃなかろうか。


三十分前

シャワーから上がって、スウェットにTシャツで慌てて部屋を片付けていると、インターフォンが鳴りエントランスには本物のカホが買物袋を両手に持って立っていた。
「マジか。」
俺は何度目かのその言葉を呟いて、解除のボタンを押した。

部屋に入るなり、俺がコードレスの掃除機を片手に立っているのを見てカホは怒った顔で言う。
「もう!その体でお掃除なんてしないでくださいよ。早く寝る。」
「いや、だって、とても女の子をあげられるような部屋じゃなくてさ。」

カホは呆れた顔をして、それから少しすまなさそうな表情になる。
「ごめんなさい。私が勝手に押しかけちゃったのに。そんな気を使ってもらわなくてもいいんだから。
ほら、高岡さんは早くベッドいってください。」

とりあえずベッドに入ると、少しひんやりしたカホの手が俺の額に置かれる。
こんなに近くにカホに触れられたのは初めてだ。
「顔も赤いし、鼻声だし、まだまだ熱ありますよ。」

なんで俺の心臓はこんなにドギマギしているんだ。 慌ててカホから目をそらす。
熱があって良かったかもしれない。
俺の顔は、おそらく別の意味で紅潮している。
「うん。。。」

「食べたいものメッセージくださいって言ったのにくれないから、適当に買ってきちゃいました。」
カホの顔が心配そうに覗き込む。 くっそーかわいいな。 元気だったら、俺、確実に襲ってるぞ。

「しかも、ビールしか飲んでないなんてダメじゃないですか。」
怒った顔もかわいい。 カホに怒られるってなんか快感なんすけど。
俺は変態か。。。
「スミマセン。。。」
俺は、布団に顔をうずめる。
「うどんなら食べられますか?」
俺は布団の中でコクっと頷く。
カホはクスッと笑って、
「キッチン、お借りしますね。」

そう言ってカホが寝室を出て行く音がした。