夜、10時を回ったところで、カホが合鍵を使って俺の部屋に帰ってきた。
一度、自分のアパートに帰ってから着替えて来たという。
ジョギングして帰ってきたみたいに、グレーのスウェットパーカーの上下を着てフードを深くかぶって俯いていると、明るい色のショートの髪の毛が少し見えるだけで、スラッとしたどこかの外国の少年みたいだ。
これで、記者を巻いてきたと言う。

玄関の扉を閉めるとフードをあげて、いたずらっぽい顔をして笑う。
………ヤバい。かわいい。
カホが抱きついてくるのと、俺が抱き寄せるのとどちらともなくギュッと抱き合って、キスをする。
「ただいま」
「おかえり」

「電話くれたよね?」
「うん。 今日、もうパパラッチに突撃されちゃってさ。年末の温泉の事バレちゃった。」
「ええ!もう!?早っ」
「今朝、結婚の事は事務所と相方に報告しただけなのにさ。お前は、会社に報告したか?」
「社長と仁さんにだけ。社長にはものすごくビックリされたし、興味津々で根掘り葉掘り聞かれたけど。」
「あの仁とかいう男は?」
「全然びっくりしてなかった。むしろ、予想してたような。」
「ああ?」
「ふうん、意外と早く決心したんだなぁ、高岡さん。とかなんとか言って。」
「なんじゃそりゃ。」
やっぱりあの男はいけすかないな。。。
「明日、もういろいろお前のとこにも来ちゃうかもな。」
「高岡創士は、売れっ子って証拠だね。 みんな相手がどんな人か気になるんだな。」
カホは、ちょっと困った顔をして、「ビールもらうね。」と冷蔵庫を開ける。
「メシは?」
「うん、食べたよ。創ちゃんは?」
「食べた。俺も飲む。」