次の撮影日では、なんとなく俺はカホに絡みづらくて、意図的に避けてしまう。
少し遅刻したりして、衣装も慌てて自分で着た程で蝶ネクタイも自分で付けたまま、スタジオ入りする。
その後も、アシスタントのカホではなく、スタイリスト本人に直しをしてもらうようなかたちを自分で作り、あえて話さないようにしている自分がいる。

そのくせ、目は合わせないように、彼女を盗み見する。
ダボっとした麻の水色のシャツワンピースの腕を捲り上げ、グレーのスパッツ、白のスタンスミスのスニーカーで、さわやかな春の装いが似合っている。
仕事道具が入ったポシェットを肩からかけ、テキパキと動き、元気な笑顔で現場を明るくする。
多分、俺が番号を渡したことなんてきっと忘れている。
期待する俺がアホなんだ。

やっぱり遠くから見ているだけでいいんだよな。
それだけでも、今の状況をありがたいと思え。