《続々》俺様幼馴染の溺愛包囲網(出産♡子育て編)

「それから、藤田先生は小さな患者さんの前ではいつも通り。
医局やナースステーションでは笑わなくなりました。
感情も見せない。

無駄な時間をなくして、少しでも長く奥様の病室にいようとしているのがわかりました。

医局員全員で協力しましたよ。」

「そうだったんだ…ありがとうね。」

「当たり前のことです。

でも、私はその時、初めて患者さんの家族の姿を藤田先生に見たんです。

家族を心配して、余裕をなくしていく姿。

身近な人が笑顔を見せなくなるところを見るのは辛かった。

同時に、そんな感情が私にあったんだと気づきました。

破水が止まったって聞いて、そこから、藤田先生の表情が少しずつ明るくなっていきました。

本当は、見たことがあるはずなんです。
患者さんのご家族は、いつもみなさん、藤田先生と同じ表情をしてたんですから。

でも、その時までは、その表情の変化を気にすることもなかった。全然寄り添えてなかったんです。

私は思いました。

医者って、病気で苦しんでいる人や家族の事で笑顔をなくしている人を、笑顔にしてあげられる仕事なんだ。
私は自覚もなくその仕事に就いていたんだ、って。

今更の話ですけど、身近で藤田先生の姿を見てなかたら、そんな風に思うことは一生なかったかもしれない。

感情のない医者を続けていたと思います。」

人を笑顔にできる仕事か…

麗ちゃん、本当に真面目ないい子だね。