しばらくして、戻ってきた男の人の手にはお盆。
その上には、目玉焼きの乗ったトーストと温かいミルクが乗っていた。
「起き上がれるか?」
そう言われ、あたしは重たい体を何とか起こした。
「色々聞きたい事はあるけど、とりあえず先に食べな。話はその後だ」
この状況では従うしかあたしに選択肢はない。
お盆を受け取り、足の上に置いて、トーストを頬張る。
美味しい…
ちゃんとしたご飯を食べたのはいつぶりだろうか…
まだ、お母さん達がいた頃だ…
…っ……
お母さん…お父さん…
2人が死んで1度も泣かなかったあたしは、ここにきて涙が溢れ出てきた。
いきなり泣き出すあたしにどうしていいか分からない男の人は、とりあえずあたしの持っていたお盆を近くの机に置いて、あたしを優しく抱きしめた。
その温もりにさらに溢れる涙は、男の人の服に大きなシミをつくっていった…


