「お母さん、これあげる」

「何?あら、スミレね。とても素敵」

編み物をしていたジャスミンにアテナは森の中に生えていたスミレをプレゼントする。ジャスミンは喜びスミレをテーブルの上にある花瓶に入れてくれた。

「ゾーイ、愛してるわ。これからもずっとあなたは私の大切な娘よ」

ゾーイは抱き締められ、頭を撫でられる。ジャスミンはゾーイが誰の子どもなのか知っているはずだ。それでも愛し続けてくれた。

「私も大好き。お母さん!」

しかし、幸せは長くは続かなかった。ゾーイが十歳になったある日、森の奥で薬草を取って家に帰るとそこには恐ろしい光景が待っていた。

「お母さん……?」

家の中は物が散乱し、床は赤い血で汚れていた。そしてその血の海の中でジャスミンが生き絶えている。

「お母さん!お母さん!」

ジャスミンの体をゾーイは何度も揺さぶった。しかし、ジャスミンは目を開けることはない。体がどんどん冷たく、固くなっていく。ゾーイは声を上げて泣いた。