修学旅行前日だというのに、私は今日もパソコンの前で太一とオンラインゲームをしていた。


「奈月そいつ倒しといて! 俺あっちみてくる」
「了解」


ベッドに入って一時間経っても私はまるで眠くならなかった。
目も頭も冴え切っていて、自分の浮かれ具合に苦笑する。

いい加減寝なきゃ、と羊を数え始めたとき電話が鳴った。

こんな時間に電話してくるなんて非常識なやつだと思いながら、ディスプレイに表示された名前を確認し応答ボタンをタップする。


「太一、今何時だと思ってんの」
「悪い、眠れなくて」
「私も」
「なら問題ないな。いつものやろうぜ」
「えー、ちょっとだよ」


そういいながらパソコンを起動した。

私たちの『ちょっと』は大体三時間。
今日は仮眠レベルの睡眠しかできないだろうな、と覚悟を決めた。


私と太一は昔からこうして夜中やオフの日にだべりながらゲームをする。


「そーいや、結局彩と東雲は話せずじまいか?」
「ぽいね。どう考えても両想いなんだから早く付き合えばいいのに」
「本当だよな。でもやっぱ彩は伊藤のこと気にしてんだろうなー」
「あのグループの雰囲気、女の怖いところ出ちゃってるもんね」


それも、よりによって一番か弱そうなまみ。よく考えれば、中学の時に東雲に告白してた子もああいう感じだったな。


「太一、今度はまみのこととか好きになんないの?」
「冗談きっつ。もうああいうタイプにはうんざりだわ」
「あら、成長」


男子好きそうなのに。
太一はもう、物事の本質を見極められるようになったのか。


「それよか、とりあえず二人が落ち着いて話せる状況にする手伝いに興味ないか?」
「ナニソレめちゃくちゃ興味ある」


食い気味の私は思わずショットガンを振り回した。その勢いで敵をひとりやっつける。


「東雲はさ、多分彩と話したがってるじゃん。彩は気付いてないけど」
「そうねえ」
「だから、とりあえず彩が落ち着いて話せる状況下にいることだけでも伝えたら、もしかしたらあとは自分で行動するかも」
「そんな行動力が奴にあるかね?」
「信じるしかない」


信じる、か。
太一が、あの東雲をねえ‥‥‥。


「なんだよ。撃たないとやられるぞ」
「おっと失敬。とりあえず、ホテルの部屋で彩を一人にしてみる?」
「じゃあ俺がそれを伝えるか」
「じゃあ、具体的にはどうしますか」
「そうだなー」


こうして話し込むこと四時間。

気が付いた時には朝日が昇り、私たちは急いで入眠した。
夢の中でも私と太一は一生懸命計画を練っていた。

その太一を見て私は思う。


人のこと言えない。


誰かのために頑張ってる君が好きだ。