男二人女二人って、完全に狙ってんだろ。

俺は心で悪態をつきながら、奈月と彩の様子を伺った。二人でなにやら話している。


「太一、ペアならないか?」
「あーわり、実は決めてる」
「えっ」


速攻で断ってしまって、心の中で謝罪。俺にも考えがあるから許してくれ。

一緒に修学旅行を楽しむなら絶対奈月と彩とがいい。
同じ班になりたいって思うぐらい、いいよな。んで、同じ班になってもいいよな。

でもそれじゃあ不器用なお前に不公平だし、餞別ぐらいくれてやる。


「東雲くんっ、あの、よかったら同じ班……」
「悪いな伊藤、東雲実はもう決まってんだわ」
「ぁ……そう、なんだ」
「……春川?」
「ごめんなー」
「っ、おい」


とりあえず伊藤から離れる。東雲の腕を引っ張って。


「おい、なんのつもりだ、余り物にする気か?」
「それもまた一興だな、違うけど」


俺も東雲も敵意むき出し。注目されないよう小声で言う。


「俺、言ったから」
「はあ? なんの話だ」
「彩に好きだって」
「っ……俺には関係ない」
「……お前もわかりやすいな……」
「……『も』って、なんだ」


カチャ、と眼鏡を直す——フリをして顔隠してるだけだな。ちょっとカマかけただけなのに引っかかった。

まあ、そろそろちゃんとフラれようとは思っているけれど。


「でも俺、彩と一緒の班になりたいし」
「勝手になれよ。俺を巻き込むな」
「お前も同じ班になるんだよ。おい、奈月、彩、いいか」
「はあ!? ちょっ……」


女子二人が「なに?」とこっちへ来る。


「同じ班ならね?」


そう言うと二人は顔を見合わせる。
俺の影に隠れるようにいる東雲は不機嫌オーラがすごい。

は、ざまあ。いつも涼し気な顔してんじゃねーよ。


「いいけど、もう1人は?」


奈月の質問に俺は東雲を軽くどつく。


「おい、挨拶」
「……よろしく」


ふてぶてしい東雲とは裏腹に「東雲くん! よろしく!」「よろしくね」と女子が挨拶。


授業終わり、東雲が俺のところに来た。


「おい」
「なにがおいだよ」


未だ不機嫌なまま。
……いや、俺としてはいつも東雲なんてこんな感じだけれど。


「なんのつもり」
「別に? なんのつもりもないけど」
「……解せないな」
「怒ってんの? まさか、伊藤とがよかったとか言うつもりか?」
「言うわけない」


ここにきてハッキリと否定した。

伊藤を思うと若干憐れなまである。

きっと向こうは思う、東雲『なんか』に相手にされないなんて、と。

その後、多分東雲からは二度と聞けないだろう言葉が待っていた。


「感謝する」
「……お前からの感謝なんていらね」
「俺だってしたくてしている訳じゃない」


俺は思った。


コイツとは一生かかっても分かり合えない。