運命のテスト結果返却日。


「……どうだろうね」
「どうだろうな」


私は朝からかなり緊張しているが、東雲くんは涼しい顔。
というかいつも通りの真顔。でも若干寝不足なのか、眠たげだ。
緊張感とは無縁なのだろうか。
ホームルーム後に結果を見せ合おうということになり、解散。

東雲くんが呼ばれて、結果を見た彼と目が合う。少しだけ口角が上がった気がした。
不思議な気持ちになりながら私も先生に結果を貰いに行く。


「望月、今回のテスト‥‥‥聞く気あるのか?」
「ちょっと怖くて結果見られないです」
「東雲と頑張ったみたいだな。お疲れ様」


先生から労いの言葉をかけられるも、やはり怖くて見られない。
結局、ホームルーム後に東雲くんに話しかけられても私は自分の結果を直視出来なかった。


「見ないのか?」
「怖い」
「じゃあ俺先に見るけど」
「どうぞ」


交換。
彼の用紙を開くと、理系クラス総合順位一位の文字。
理系科目は全て一位で、文系科目も全教科平均を越えている。


「東雲くん」
「なに」
「すごくおめでとう」
「とてもありがとう」


さっきのような微笑で私の結果用紙をこちらに向ける。


「見てみ」


首を上下し恐る恐る開くと……。


「……! やった……!」
「おめでと」
「ありがとう! ありがとう!」


文系クラス総合順位は二位だけれど、理系科目は全て一位が取れた。
それは周りが全員文系でかつ理系が苦手な集団なのもあるけれど、素直に嬉しい。


「本当にありがとう、東雲くん」
「望月が頑張ったからだろ。俺は何もしてない」
「そんなことないよ。教え方がよかったんだよ」
「それなら素直に受け取っておく」


絶妙な距離感で言葉を交わす。なんとも言い難いこの感じ。
彼の微笑は初めてだった。無表情な彼と、難しい顔の彼しか、私は知らなかった。目元がいつもよりも柔らかい。眉間のしわなんてあるはずもなく。


とても、綺麗で、かっこいい。
ふと心の中で思った。


——この笑顔を誰にも向けてほしくない。


私が感じたことのない種類のどきどき。
きっと、男の子と一緒に頑張って勉強して成果が出ると、みんなこうやってどきどきするんだろうな。
ちょっとだけ、大人になれた気がした。