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『ここが理事長室だ』

不意に彼の足が止まったのは、大きな扉の前。
お洒落な木で出来た取っ手も。
金のプレートも、どれも高そうなイメージのモノばかり。


唯一、親近感を覚えたのはその金のプレートの中の『理事長』と書かれた文字だけ。




手書き‥‥かな

文字が右肩上がりで、幼い子供が頑張って書いた様な文字。

大事にプレートの中に入れられ、保管している様にも見えるそれに自然と頬が緩んだ。



薄々は気付いていたけど、なんというか‥‥

所々をさらっと手を入れていて、

ここに来るまでに箇所箇所お洒落な所を目にした。




例えば女子トイレのドアにはネコのシルエット

男子トイレのドアはピエロ、

靴箱には犬の足跡、

階段にはちょっとした風景が描かれていて、


高校、と言うより保育園の中みたいな。


『わざわざありがとうございました、あの‥‥ジュースまでご馳走になってしまって』