『ん?なぜキミが謝る?』

『へ!?え、‥‥だって』


不思議そうな顔をする彼、

そんな彼にたいして、間抜けな顔を晒してしまったのは言うまでもなく。

たじたじな私。

その様子を見ていた彼はどう思ったのか、緩やかに口角が上がり、目元が緩んだ。


あまりの整い過ぎた笑みに、息を飲む

わ、‥‥私、お兄で免疫ついてる筈‥‥なのになぁ

と、1人、現実逃避の如く内心で呟いてしまったのは仕方ない。



『大体、全生徒がヤツに気を使う必要なんてないからな』

『?』

『昔はまともだったんだが、』

『‥‥むかし?』

『あぁ。なんだろうな‥‥あの人の背中を追いかけ過ぎて、見失ってんだろうな』


どこか悲しげに、何かを思い出しているかの様なそんな瞳。ほんの一瞬、寂しそうに揺れた綺麗な目は伏せられ、

『ふっ‥‥口が滑ったな、取り敢えず案内するよ』

そう口にした彼はもう、悲しげな色を消していた。




–––––––––––––––‥‥あの人って誰ですか?

野暮な質問は空気と共に飲み込んで。

歩き出した彼を慌てて追いかけた。