『ここの自販機は皆、使いたがらないんだ』

『?‥‥使い、たがらない?』


発せられた言葉を思わず復唱してしまう。
意味を理解したくて真似て口にするも、やはり意味が分からず、首を傾げた。

わ‥‥私、理解力がないのかな?

使いたがらない、なんてまるで曰く付き‥‥みたいな

って、まさかね!ふふっ、曰く付きの自販機なんて聞いた事ないもん。



『そのお茶を好むヤツが居てな、ソイツがちょっとタチが悪いんだよ』

そう教えてくれた彼はやれやれと言わんばかりの表情で、眼鏡を指で軽く押し上げる。

きっと今、彼はそのちょっとタチが悪いその人の事を思い浮かべているのだろう、目の前の彼は眉間にシワを寄せていて、彼にこんな顔をさせる相手が少し気になった。


『‥‥このお茶、ですか』

『あぁ、ざっくり話せばソイツがここでお茶を買うから、他の生徒らは買えなくなってしまってな。

で、少し離れた場所にいくつか自販機を設けてあると言うわけだ』



‥‥な、なるほど

つまり、えっと‥‥、


『わ、‥‥私、買っちゃった‥‥んです、けど』


使ってはいけない自販機で私は、お"抹茶を買ってしまっていて。

『あぁ、止めに入ったが間に合わなかった』

あぁ、だから最初この人は慌てた声で私の肩を掴んだのか、


と、今になって理解した。

『すみ、‥‥ません、私』

知らなかったとはいえ、きっと他の人が知ったらいい気はしないだろう。

そう考えると、無意識のうちに謝罪を口にしていた