ネイサンの言葉に、全員がネイサンに注目する。ネイサンはロネを見つめたまま話を続けた。

「ここは俺とナタリーで食い止める。俺は勇者の息子で剣に長けているし、ナタリーはセイレーンのハーフだ。互いの力を合わせればきっと何とかなる。だからお前はアテナを連れて逃げろ」

「でも……!」

ロネはすぐに反論した。あんな大勢に敵うはずがない。仲間を置いてなどいけない。そう言おうとしたが、ナタリーに「ロネ」と手を掴まれる。

「アテナと一緒に逃げて。今の街の人たちにきっと話は通じない。ここにいたらアテナは確実に殺される。一緒に逃げてアテナを守ってあげて」

そう言うナタリーの目に、迷いや戸惑いなどはもうなかった。ロネは「……わかった」と言いアテナの手を掴む。

「ナタリー、ネイサン、ありがとう」

ロネとアテナはそう言い、家を出て行く。ナタリーとネイサンは「必ず生きて!!」と二人の背中に叫んでいた。