先生へ、子守唄を。




私が図書館へ辿り着いた時には、もうほとんどの委員が席に着いていた。

五分程待って、この委員会を担当している先生が急いでやって来た。

九重 藍司(ここのえ あいし)先生。

教科は数学で、私のクラス一年三組の担任でもある。

いつも目の下に隈が出来ていて、髪は真っ黒、肌は色白な事から、皆からは、パンダ、パンダ先生などと呼ばれてる。

数年前までは、外見は今より健康的で、イケメンと言われていた、という噂がある。



「皆、お待たせ。さあ、始めようか」



私の受付当番は、来週火曜のお昼休みと放課後になった。


「ところで、ずっと見当たらない本があるんだ。本棚にある筈なんだけど。誰か、この後探すのを手伝ってくれないか?」



誰も手を挙げる人はいない。

そりゃそうだ、皆、早く帰りたい。



「頼むよ。一人でいいんだ」



まだ誰も行かないのか。

普段は、こういうのに名乗り出るような柄でもないが。

私は、手を挙げた。



「先生、私がやります」





皆が帰った後、先生に本のタイトルを教えてもらい、早速探しにかかる。

なぜわざわざ、こんな仕事を受け入れたのかというと、九重先生が日に日に痩せていってる気がするから。

今日の先生は、いつもより目が虚ろで、HRの時フラついているところも見てしまったし。

あんなに体調が悪そうなんだから、私が早く本を見つけて、少しでも長く家で休んでもらおう。

例の本を探そうと、置いてそうな本棚を片っ端から漁っていると、突然、九重先生の身体が、崩れるように傾いた。



「せっ、先生! 大丈夫ですか?!」



咄嗟に駆け寄って支えたが、いつにも増して顔色が悪く、息も荒いみたいだ。



「ご、めん。すぐ、治るから」



「先生、一旦椅子に座ってて下さい!」



足元もおぼつかない様子の先生を椅子へ誘導すると、彼はそのまま項垂れてしまった。