高校生になって最初の夏、去年と全くといって良い程代わり映えのない日常。
入学当初の友達作りも何とか成功して、今は安定の高校生活を送っている。
いつものメンバー三人で、お弁当を開く。
「何それ可愛い! 柚子(ゆず)ちゃん、その卵焼き、一個ちょうだい?」
そう言って、私の横にいる柚子ちゃんの弁当箱に箸を延ばしたのは、紗依子(さいこ)ちゃん。
「良いなー、私もちょうだい。この野菜炒めと交換!」
「それ燈花(とうか)ちゃんが嫌いなだけでしょ! 野菜食べないと健康に悪いよ?」
毎日、似たような会話。
でも、三人で過ごすこの時間も、割と気に入っている。
「おーい、紗依子!」
見ず知らずの男子が、教室のドアの外から紗依子ちゃんを呼んだ。
「はーい、どしたの?」
よく見慣れた光景に、私と柚子ちゃんは肩を竦めた。
私達の友達、紗依子ちゃんは社交的で顔も可愛い。
つまり、かなりモテる。
「ごめーん。タイプじゃないの」
紗依子ちゃんは、男子に告白される度に振っている。
なぜなら、彼女は極度のイケメン好きだから。
この事は一部の人しか知らない。
「紗依子ちゃんは、理想が高すぎるんだよ。せっかくモテるのに、勿体ない」
そう言っている柚子ちゃんも、周りが気付いてるかは知らないが、かなり整った顔立ちをしている。
顔のパーツの位置、形、全てがお手本のような感じ。
でも、柚子ちゃんは恋愛には一切興味がないらしく、そんなに男との関わりがない。
この中で一番可愛くないのは、私だ。
それでもこの空間が苦痛に感じないのは、二人の事を少なからず信頼しているからだろう。
戻ってきた紗依子ちゃんと一緒にご馳走様をして、席に着いた。