夜の帳が、惨劇のあとの病院を重く包み込んでいた。
すべてを打ち明け、泥を塗り合うような会話をしたはずだった。それなのに、あの禍々しいピンク色のバスが電柱に食い込んだ現場の光景が、僕の脳裏で何度もフラッシュバックする。そして、それと同時に抑えようのない衝動が、また心臓の奥を締め付けた。
「……どうしてだろう」
病室の端で、僕は自分の膝を抱え込んでいた。
あかり、南ちゃん、にこるちゃん。彼女たちが纏う空気、彼女たちの肌に触れたものの匂い。それへの執着が、毒のように全身を駆け巡る。
「消えないんだ……」
あんなに醜いところを晒したのに。彼女たちに軽蔑されるような欲望だと分かっているのに。
僕は、静まり返った病室で、声を殺して泣いた。枕に顔を押し付け、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、あの日の「約束」や「奪われた時間」の欠片を探しているような、空虚な孤独感に震えた。
なぜ、こんなにも飢えているんだろう。
聖書を語り、愛を説き、傷ついた彼女の心に寄り添おうとした人間が、その一方で、人の唾やマスクという「生の形跡」にすがりつきたくて仕方がない。
――僕らはみんな生きている。生きているから悲しんだ。
『手のひらを太陽に』の歌詞が、今は皮肉な刃となって自分を切り刻む。
生きていれば、腹も減るし、愛も欲しくなる。でも、今の僕は、その「愛」の形がどうしようもなく歪んでしまっているのだ。
「誰か……僕のこの孤独を、そのマスクで、その唾で、埋めてくれないか」
心の中で叫んでも、夜の闇はただ静かにそこに在るだけだ。
あかりたちが看護のために微笑んでくれる時、僕はその温もりさえも「摂取」したくてたまらなくなる。この異常な飢えは、彼女たちが僕にくれた優しさを、僕が歪んだ方法でしか受け取れないという呪いなのかもしれない。
僕はまた、湿った枕に頭を埋めた。
明日、彼女たちに会った時、この溢れ出る衝動をどう隠せばいいのか。それとも、また全てをぶちまけて、泥の中で泣き合えばいいのか。
消えないこの欲求を抱えたまま、僕はただ、夜が明けるのを待っていた。救いのない、熱い涙を流しながら。
すべてを打ち明け、泥を塗り合うような会話をしたはずだった。それなのに、あの禍々しいピンク色のバスが電柱に食い込んだ現場の光景が、僕の脳裏で何度もフラッシュバックする。そして、それと同時に抑えようのない衝動が、また心臓の奥を締め付けた。
「……どうしてだろう」
病室の端で、僕は自分の膝を抱え込んでいた。
あかり、南ちゃん、にこるちゃん。彼女たちが纏う空気、彼女たちの肌に触れたものの匂い。それへの執着が、毒のように全身を駆け巡る。
「消えないんだ……」
あんなに醜いところを晒したのに。彼女たちに軽蔑されるような欲望だと分かっているのに。
僕は、静まり返った病室で、声を殺して泣いた。枕に顔を押し付け、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、あの日の「約束」や「奪われた時間」の欠片を探しているような、空虚な孤独感に震えた。
なぜ、こんなにも飢えているんだろう。
聖書を語り、愛を説き、傷ついた彼女の心に寄り添おうとした人間が、その一方で、人の唾やマスクという「生の形跡」にすがりつきたくて仕方がない。
――僕らはみんな生きている。生きているから悲しんだ。
『手のひらを太陽に』の歌詞が、今は皮肉な刃となって自分を切り刻む。
生きていれば、腹も減るし、愛も欲しくなる。でも、今の僕は、その「愛」の形がどうしようもなく歪んでしまっているのだ。
「誰か……僕のこの孤独を、そのマスクで、その唾で、埋めてくれないか」
心の中で叫んでも、夜の闇はただ静かにそこに在るだけだ。
あかりたちが看護のために微笑んでくれる時、僕はその温もりさえも「摂取」したくてたまらなくなる。この異常な飢えは、彼女たちが僕にくれた優しさを、僕が歪んだ方法でしか受け取れないという呪いなのかもしれない。
僕はまた、湿った枕に頭を埋めた。
明日、彼女たちに会った時、この溢れ出る衝動をどう隠せばいいのか。それとも、また全てをぶちまけて、泥の中で泣き合えばいいのか。
消えないこの欲求を抱えたまま、僕はただ、夜が明けるのを待っていた。救いのない、熱い涙を流しながら。
