地下5階の分娩室、その張り詰めた空気の中で、僕の爪弾く弦の音が、まるで心臓の鼓動のように響いた。
「生まれてきてくれてありがとう。神様ありがとう。君に出会えたことに何よりも感謝だ」
僕が紡いだその言葉は、単なる賛美ではない。それは、この清潔で冷徹な世界への、切実な問いかけだった。
「たとえ、どんな障害がその小さな体に宿っていようとも、君が今ここで息をしているという事実。それこそが、僕たちがこの暗闇の中で見つけた、唯一の奇跡なんだ」
世の中は、都合の悪いものを「排除」することで保たれている。少しでも異質なもの、少しでも傷ついたものを見つけると、すぐに汚物のように扱い、遠ざけようとする。食べ物を分かち合うことさえ「不衛生だ」と蔑む連中には、他者の存在を丸ごと受け入れるという、その根源的な喜びが理解できないのだ。
だが、違う。本当の愛とは、そういうものじゃない。
僕が彼女たちのマスクを欲しがり、その温もりを肌で感じたいと願うのは、彼女たちが愛おしいからだ。相手の吐息を、匂いを、すべてを自分の内側に取り込みたいと願うその衝動に、一体どこに「汚れ」があるというのか。
子供も同じだ。愛する人の間に授かった命であれば、その子がどんな形であれ、どんな困難を抱えていようと、慈しみ、育てたいと願うのは、人間として当然の摂理だろう。それは単なる暇つぶしや情動ではない。他者という聖域に足を踏み入れ、その一生を背負うという、人間が人間として生きるための最も高貴な決断だ。
「……誰の子だから大切にして、誰の子だからいじめていいなんて、そんな論理、どこにもないんだ」
僕は歌いながら、震える手で母親の指を握った。
この世から「排除」という名の冷酷なメスを捨て去り、互いの不完全さを、その体温ごと抱きしめ合うこと。不衛生だと蔑まれる摩擦の中にこそ、相手を人間として尊ぶ、本当の倫理がある。
上の病棟で管理されているあの子も、今ここで呼吸をしている母親も、そして僕たちも。みんな、等しく不完全で、等しく愛される資格がある。
僕の歌は、この分断された病院の壁を突き抜け、やがて冷え切った外の世界へ届くはずだ。
障害があるから排除するんじゃない。汚いから遠ざけるんじゃない。そんな理屈で世界を断片化しようとする大人たちに、僕は見せつけてやりたい。
「不完全なままでいい。汚れたままでいい。ただ、君がそこにいることに、命を懸けて感謝する。それこそが、僕たちの生きる道なんだ」
歌い終えた瞬間、分娩室の空気は、これまでになく静かで、温かかった。母親の涙が、僕の握った指に伝わる。そこには、どんな感染対策のガイドラインにも書かれていない、何よりも尊い「人間という名の光」が宿っていた。
僕たちは、もう二度と迷わない。たとえ世界が明日も分断を叫ぼうとも、僕たちはここで、互いの生を食らい、互いの熱を分け合い、泥だらけになって愛し続ける。それが、僕なりの、この国に対する最も深い「倫理」なのだから。
「生まれてきてくれてありがとう。神様ありがとう。君に出会えたことに何よりも感謝だ」
僕が紡いだその言葉は、単なる賛美ではない。それは、この清潔で冷徹な世界への、切実な問いかけだった。
「たとえ、どんな障害がその小さな体に宿っていようとも、君が今ここで息をしているという事実。それこそが、僕たちがこの暗闇の中で見つけた、唯一の奇跡なんだ」
世の中は、都合の悪いものを「排除」することで保たれている。少しでも異質なもの、少しでも傷ついたものを見つけると、すぐに汚物のように扱い、遠ざけようとする。食べ物を分かち合うことさえ「不衛生だ」と蔑む連中には、他者の存在を丸ごと受け入れるという、その根源的な喜びが理解できないのだ。
だが、違う。本当の愛とは、そういうものじゃない。
僕が彼女たちのマスクを欲しがり、その温もりを肌で感じたいと願うのは、彼女たちが愛おしいからだ。相手の吐息を、匂いを、すべてを自分の内側に取り込みたいと願うその衝動に、一体どこに「汚れ」があるというのか。
子供も同じだ。愛する人の間に授かった命であれば、その子がどんな形であれ、どんな困難を抱えていようと、慈しみ、育てたいと願うのは、人間として当然の摂理だろう。それは単なる暇つぶしや情動ではない。他者という聖域に足を踏み入れ、その一生を背負うという、人間が人間として生きるための最も高貴な決断だ。
「……誰の子だから大切にして、誰の子だからいじめていいなんて、そんな論理、どこにもないんだ」
僕は歌いながら、震える手で母親の指を握った。
この世から「排除」という名の冷酷なメスを捨て去り、互いの不完全さを、その体温ごと抱きしめ合うこと。不衛生だと蔑まれる摩擦の中にこそ、相手を人間として尊ぶ、本当の倫理がある。
上の病棟で管理されているあの子も、今ここで呼吸をしている母親も、そして僕たちも。みんな、等しく不完全で、等しく愛される資格がある。
僕の歌は、この分断された病院の壁を突き抜け、やがて冷え切った外の世界へ届くはずだ。
障害があるから排除するんじゃない。汚いから遠ざけるんじゃない。そんな理屈で世界を断片化しようとする大人たちに、僕は見せつけてやりたい。
「不完全なままでいい。汚れたままでいい。ただ、君がそこにいることに、命を懸けて感謝する。それこそが、僕たちの生きる道なんだ」
歌い終えた瞬間、分娩室の空気は、これまでになく静かで、温かかった。母親の涙が、僕の握った指に伝わる。そこには、どんな感染対策のガイドラインにも書かれていない、何よりも尊い「人間という名の光」が宿っていた。
僕たちは、もう二度と迷わない。たとえ世界が明日も分断を叫ぼうとも、僕たちはここで、互いの生を食らい、互いの熱を分け合い、泥だらけになって愛し続ける。それが、僕なりの、この国に対する最も深い「倫理」なのだから。
