パンデミック.新形コロナウイルス

僕の肩を叩いたのは、あの列車の事故の時に出会った中国人の女性と、彼女が連れていた子供だった。混乱する喧嘩の渦中、僕は彼女の姿を認めるなり、当時の記憶が鮮明に蘇るのを感じた。
「あの時は本当に……助けてくれてありがとう。あなたのおかげで、僕は無事に帰ることができたんだ」
僕は彼女に向かって、心からの感謝を伝えた。事故のあの絶望的な状況下で、僕を救い出し、立ち上がらせてくれたのは彼女だった。あの時受けた恩義をようやく直接伝えることができた。彼女は静かに微笑み、子供の手を握り直した。
中国側の配信者たちとの衝突も、ライブの生配信という交換条件によって強制的に幕が下ろされた。だが、パンダは一向に帰還の兆しを見せない。日本政府と僕たちは、最終手段に出た。日本の雑誌に掲載された貴重な猫の貸し出しを条件に、パンダとの交換を持ちかけたのだ。レンタル料という名目の外交交渉の末、僕の地下室にいたもう一匹の巨大な猫が、パンダの身代わりとして国境を越えていった。
桜坂高校の体育館に、じじいのギターの音が戻ってくる。その背後には、TikTokやTVerを通じて世界中に拡散されるライブ映像と、国境を超えて連結された物語の線路が、どこまでも続いていた。