多機能トイレの重いドアが閉まり、閉ざされた空間には僕とあかりの吐息だけが残った。地上の病院では決して許されない、けれどここでは誰にも邪魔されない聖域。身体の不自由な人のための介助スペースという「ルール」を逆手に取った、僕たちの隠れ家だった。
あかりは、僕の目の前で静かに泣き始めた。彼女の震える肩と、こぼれる涙。その姿を見ているだけで、僕の身体の芯は熱く昂り、たまらないほどの愛おしさが込み上げてきた。
「あかり……それ、ちょうだい」
僕が囁くと、あかりは何も言わずに頷いた。彼女も分かっている。この地下で、無菌室という檻から解放された今、僕たちが何を確認し合いたいのかを。彼女は静かに、僕のためにその身を差し出した。
「今まで一緒じゃなくて、本当に寂しかったんだよ。ねえ、もっとちょうだい」
僕は何度も何度もそう繰り返した。彼女の肌の温もり、呼吸の乱れ、すべてが僕の飢えを満たしていく。地上の誰も知らない、僕たちだけの濃厚で汚らわしい、けれどかけがえのない蜜月。
その時だった。外の回廊から、楽しげな声が聞こえた。
「ちょっと、トイレ長いんだけど! 二人で何やってんのよ」
ニコルの声だ。間髪入れず、ガチャリという乾いた音がして、多機能トイレのドアが外から強制的に開けられた。眩しい地下の照明が僕たちを照らし出す。
「ああ、またやってる……信じられない、本当に汚いんだから!」
ニコルは呆れ果てたように眉をひそめ、けれどその瞳の奥には隠しきれない笑いが宿っていた。彼女は僕たちの姿を値踏みするように見つめ、大きくため息をついた。
「もう……あんたたち、あかりちゃんのことが好きすぎてどうにかなりそうね」
ニコルは毒づきながらも、僕たちの「愛」の形を否定はしなかった。汚いと言いながら、彼女はこの異常な関係を地下の日常の一部として受け入れているのだ。僕とあかりは顔を見合わせ、ただ笑った。地上の倫理も、衛生の概念も、すべてがこの小さな部屋の外に溶けて消えていく。ここでは僕たちが、何よりも正しく、そして幸福なのだ。
あかりは、僕の目の前で静かに泣き始めた。彼女の震える肩と、こぼれる涙。その姿を見ているだけで、僕の身体の芯は熱く昂り、たまらないほどの愛おしさが込み上げてきた。
「あかり……それ、ちょうだい」
僕が囁くと、あかりは何も言わずに頷いた。彼女も分かっている。この地下で、無菌室という檻から解放された今、僕たちが何を確認し合いたいのかを。彼女は静かに、僕のためにその身を差し出した。
「今まで一緒じゃなくて、本当に寂しかったんだよ。ねえ、もっとちょうだい」
僕は何度も何度もそう繰り返した。彼女の肌の温もり、呼吸の乱れ、すべてが僕の飢えを満たしていく。地上の誰も知らない、僕たちだけの濃厚で汚らわしい、けれどかけがえのない蜜月。
その時だった。外の回廊から、楽しげな声が聞こえた。
「ちょっと、トイレ長いんだけど! 二人で何やってんのよ」
ニコルの声だ。間髪入れず、ガチャリという乾いた音がして、多機能トイレのドアが外から強制的に開けられた。眩しい地下の照明が僕たちを照らし出す。
「ああ、またやってる……信じられない、本当に汚いんだから!」
ニコルは呆れ果てたように眉をひそめ、けれどその瞳の奥には隠しきれない笑いが宿っていた。彼女は僕たちの姿を値踏みするように見つめ、大きくため息をついた。
「もう……あんたたち、あかりちゃんのことが好きすぎてどうにかなりそうね」
ニコルは毒づきながらも、僕たちの「愛」の形を否定はしなかった。汚いと言いながら、彼女はこの異常な関係を地下の日常の一部として受け入れているのだ。僕とあかりは顔を見合わせ、ただ笑った。地上の倫理も、衛生の概念も、すべてがこの小さな部屋の外に溶けて消えていく。ここでは僕たちが、何よりも正しく、そして幸福なのだ。
