地下の闇は、僕たちにとっての「救い」であり、同時に残酷な「聖域」だった。
そこには、太陽を恐れて生きる子供たちがいる。色素性乾皮症(XP)。わずかな紫外線さえも彼らの皮膚を焼き、細胞を蝕む毒となる。彼らにとって、世界とは光のない場所でなければならなかった。
僕が管理する地下の病室では、蛍光灯の光は極限まで制限されていた。一般的な照明の熱や光量があれば、それは彼らにとって太陽の下にさらされるのと同じ苦痛を意味する。だからこそ、病室はいつも薄明かりの中にあり、まるで時が止まったような静寂が支配していた。1590Wなどという眩い人工太陽の光は、ここでは彼らを殺すための凶器に等しい。
そんな「光なき場所」で、彼らは日々をやり過ごしている。命に直結する痛みではないかもしれない。けれど、太陽の温かさを知らず、青空を見上げることも許されない人生を、どうして「軽い」などと言えるだろうか。
「先生、今日は外の天気、どんな感じ?」
薄暗い病室の隅で、少年が小さな声で尋ねる。僕はその問いを聞くたびに、胸が締め付けられるような痛みを覚える。彼らにとって、窓の外の光は、一生触れることのない「神話」のようなものなのだから。
だからこそ、僕は決断した。この地下に、院内学級を作ろうと。
「今日からは、ここが君たちの教室だ」
僕は地下の片隅に、光を遮断した特別な教室を設けた。そこには、有害な波長をカットした柔らかな明かりだけが灯り、子供たちは本を読み、筆を走らせ、笑い合う。地上の学校が、まばゆい太陽の下で青春を謳歌している間、彼らはこの深い地下で、自分たちだけの星空を描いているのだ。
ここには、死と隣り合わせの子供たちもいれば、太陽を奪われた子供たちもいる。彼らは皆、何かの犠牲になり、あるいは病という運命に縛り付けられている。でも、この地下の教室でノートを広げているときだけは、彼らもまた一人の生徒であり、一人の人間だった。
僕は時折、授業の合間にカルテを置いて、彼らの読み上げる教科書の音に耳を傾ける。地上の喧騒も、コロナの脅威も、この地下の厚いコンクリートの壁の向こう側だ。
「生きているから、学ぶんだ」
僕がそう教えるたびに、彼らは薄暗い中で、まるで光を見つけたかのように目を細めて微笑む。その笑顔を見るたびに、僕は思う。医師として、彼らの皮膚を守ることはできる。でも、彼らが奪われた「太陽」の代わりとなる希望を、僕はこの手で灯せているのだろうか。
地下の院内学級。そこは、光を閉ざされた者たちが、魂の光を灯し合う場所。僕は今日もその薄明かりの中で、彼らの成長を見守りながら、自分自身の心の奥底にある暗闇を静かに噛み締めている。
そこには、太陽を恐れて生きる子供たちがいる。色素性乾皮症(XP)。わずかな紫外線さえも彼らの皮膚を焼き、細胞を蝕む毒となる。彼らにとって、世界とは光のない場所でなければならなかった。
僕が管理する地下の病室では、蛍光灯の光は極限まで制限されていた。一般的な照明の熱や光量があれば、それは彼らにとって太陽の下にさらされるのと同じ苦痛を意味する。だからこそ、病室はいつも薄明かりの中にあり、まるで時が止まったような静寂が支配していた。1590Wなどという眩い人工太陽の光は、ここでは彼らを殺すための凶器に等しい。
そんな「光なき場所」で、彼らは日々をやり過ごしている。命に直結する痛みではないかもしれない。けれど、太陽の温かさを知らず、青空を見上げることも許されない人生を、どうして「軽い」などと言えるだろうか。
「先生、今日は外の天気、どんな感じ?」
薄暗い病室の隅で、少年が小さな声で尋ねる。僕はその問いを聞くたびに、胸が締め付けられるような痛みを覚える。彼らにとって、窓の外の光は、一生触れることのない「神話」のようなものなのだから。
だからこそ、僕は決断した。この地下に、院内学級を作ろうと。
「今日からは、ここが君たちの教室だ」
僕は地下の片隅に、光を遮断した特別な教室を設けた。そこには、有害な波長をカットした柔らかな明かりだけが灯り、子供たちは本を読み、筆を走らせ、笑い合う。地上の学校が、まばゆい太陽の下で青春を謳歌している間、彼らはこの深い地下で、自分たちだけの星空を描いているのだ。
ここには、死と隣り合わせの子供たちもいれば、太陽を奪われた子供たちもいる。彼らは皆、何かの犠牲になり、あるいは病という運命に縛り付けられている。でも、この地下の教室でノートを広げているときだけは、彼らもまた一人の生徒であり、一人の人間だった。
僕は時折、授業の合間にカルテを置いて、彼らの読み上げる教科書の音に耳を傾ける。地上の喧騒も、コロナの脅威も、この地下の厚いコンクリートの壁の向こう側だ。
「生きているから、学ぶんだ」
僕がそう教えるたびに、彼らは薄暗い中で、まるで光を見つけたかのように目を細めて微笑む。その笑顔を見るたびに、僕は思う。医師として、彼らの皮膚を守ることはできる。でも、彼らが奪われた「太陽」の代わりとなる希望を、僕はこの手で灯せているのだろうか。
地下の院内学級。そこは、光を閉ざされた者たちが、魂の光を灯し合う場所。僕は今日もその薄明かりの中で、彼らの成長を見守りながら、自分自身の心の奥底にある暗闇を静かに噛み締めている。
