「あかり、愛してる。本当に愛してるんだ」
僕は何度、その言葉を繰り返しただろうか。かすれた声は、湿った地下室の空気の中に吸い込まれていく。
眠りに就く直前、僕はあかりの唇を指でなぞり、そのまま躊躇なく奥へと押し込んだ。彼女の吐息、熱、そして彼女そのものの残滓を、指先から喉の奥まで探り当てるようにして奪う。そこには、飛沫という名の彼女の魂の欠片が宿っている。
僕はその指を、自分の頬に、額に、そしてまぶたに、愛おしげに何度も塗りつけた。彼女の体液が乾き、僕の肌と一体化していく感覚に、激しい陶酔を覚える。
あかりは、呆れ果てたように、しかしどこかあたたかい溜息をついて笑った。
「先生……そんな汚いこと、本当にいいの?」
彼女の声は、僕の狂気をすべて許容していた。地上の清潔な人間たちが、ウイルスの影に怯え、互いの距離を測りかねている間、僕たちはこうして、互いの内側の最も深い場所を汚し合うことでしか、繋がることができない。
立場は逆転していた。
泣きじゃくり、彼女に縋り付いて情けない姿を晒しているのは、他ならぬ僕の方だった。あかりは、傷つき、鼻から血を流し、酷く疲弊しているはずなのに、僕の頭を優しく撫で、まるで幼子をあやすように、「大丈夫だよ」と呟いている。
その手から伝わる温もりが、僕の心臓を締め付ける。
彼女が僕をなだめ、僕が彼女の腕の中で深い眠りへと落ちていく。この地下二階の病室で、医療の倫理も、社会的な役割も、すべてが崩壊し、混沌とした愛だけが残った。
明日になれば、また地上の無責任な太陽が昇る。
けれど、そんなものは僕たちには関係ない。指先に残る彼女の匂いを嗅ぎながら、僕は安らかな眠りに就いた。汚濁にまみれた、けれどこの世界で唯一、僕が居場所を感じられる夜だった。
僕は何度、その言葉を繰り返しただろうか。かすれた声は、湿った地下室の空気の中に吸い込まれていく。
眠りに就く直前、僕はあかりの唇を指でなぞり、そのまま躊躇なく奥へと押し込んだ。彼女の吐息、熱、そして彼女そのものの残滓を、指先から喉の奥まで探り当てるようにして奪う。そこには、飛沫という名の彼女の魂の欠片が宿っている。
僕はその指を、自分の頬に、額に、そしてまぶたに、愛おしげに何度も塗りつけた。彼女の体液が乾き、僕の肌と一体化していく感覚に、激しい陶酔を覚える。
あかりは、呆れ果てたように、しかしどこかあたたかい溜息をついて笑った。
「先生……そんな汚いこと、本当にいいの?」
彼女の声は、僕の狂気をすべて許容していた。地上の清潔な人間たちが、ウイルスの影に怯え、互いの距離を測りかねている間、僕たちはこうして、互いの内側の最も深い場所を汚し合うことでしか、繋がることができない。
立場は逆転していた。
泣きじゃくり、彼女に縋り付いて情けない姿を晒しているのは、他ならぬ僕の方だった。あかりは、傷つき、鼻から血を流し、酷く疲弊しているはずなのに、僕の頭を優しく撫で、まるで幼子をあやすように、「大丈夫だよ」と呟いている。
その手から伝わる温もりが、僕の心臓を締め付ける。
彼女が僕をなだめ、僕が彼女の腕の中で深い眠りへと落ちていく。この地下二階の病室で、医療の倫理も、社会的な役割も、すべてが崩壊し、混沌とした愛だけが残った。
明日になれば、また地上の無責任な太陽が昇る。
けれど、そんなものは僕たちには関係ない。指先に残る彼女の匂いを嗅ぎながら、僕は安らかな眠りに就いた。汚濁にまみれた、けれどこの世界で唯一、僕が居場所を感じられる夜だった。
