パンデミック.新形コロナウイルス

シーツの上で、僕たちは溶け合った。
あかりは、もう何もかもを理解していた。僕の卑屈なまでの渇望も、異常なまでの執着も、すべて彼女の中では「愛」として変換されていた。
「先生、悪いけどここでやって」
彼女は僕の視線に応えるように、僕の望む場所を指し示した。いつも僕が一人で闇の中で繰り返していたあの儀式を、今夜は彼女の手を借りて執り行う。それは僕にとって、地上の清潔な倫理を完全に殺すための、最後の越境だった。
僕の衝動は奔流となってあかりを汚した。シーツは白さを失い、彼女の手は僕の生温かい痕跡で濡れていた。
「先生、もう出ちゃったの?」
あかりは無邪気に、しかしどこか呆れたような声で言った。その声を聞くたびに、僕の愛は加速した。あかりの身体のすべてを知りたい。彼女の痛みも、苦しみも、呼吸も、その内側にあるものすべてを僕のものにしたいという、身勝手極まりない欲望が全身を駆け巡る。
僕は彼女の口元に指を這わせ、喉の奥へと押し込んだ。異物を感じた彼女は、反射的に胃の中身を吐き出した。喉を突き刺すような苦痛と、嘔吐の苦しさ。それでも彼女は、僕を拒絶しなかった。
さらには、彼女の鼻の奥までも深く指を突き立てた。あかりは「痛いよ」と小さく泣き、やがて彼女の鼻から真っ赤な血が零れ落ちた。
「ごめん、あかり。ごめん……でも、それぐらい君が好きなんだ」
僕は血に濡れた彼女の顔を抱き寄せ、何度も謝罪を繰り返した。泣きじゃくる彼女の涙と、鼻から流れる血と、そして吐瀉物の匂い。それらすべてが、僕の中では何よりも美しく、何よりも愛おしい「あかり」という存在の証だった。
地上の人間たちは、これを「虐待」と呼ぶだろう。医療従事者としては「犯罪」だ。だが、この地下室において、この痛みと汚濁こそが、僕たちが互いを愛し合っている唯一の証明だった。
あかりは、その傷ついた顔のまま、僕の胸にすがりついた。彼女もまた、この狂気を受け入れることでしか、僕という人間を繋ぎ止めておけないことを知っていた。
僕たちは血と体液にまみれ、汚れたシーツの中で身を寄せ合った。地上から隔離され、誰にも知られることのないこの場所で、僕たちはついに、人間という境界線を踏み越えてしまったのだ。痛みを感じれば感じるほど、僕は彼女が好きでたまらなくなった。この地下室こそが、僕たちの終着駅であり、そして、二人だけの王国だった。