静かにホロホロと涙を零し続ける私の頬を、久喜さんの長い指がなぞる。
「……泣かないでくれ」
そうしてすくい上げた私の涙を、そっと自分の唇に運んだ。
他の人がやったらキザにしか見えないそんな仕草にも、うっとりと見惚れてしまうばかりだった。
(恋って本当に人を盲目にさせるし、好きな相手を無限に美化させてしまう……)
そのことを、以前は怖いと感じてしまった。
自分が自分でなくなっていくようで、戻れなくなる前にブレーキをかけなければと、常に言い聞かせていた。
(でも……)
「私、こんなに1人の男性のこと、今まで思ったことなんてありません」
「遠藤……」
不思議と、恥ずかしいという気持ちは沸かなかった。
あるのはただ、やっと正直に伝えられるという、ホッとした気持ち。
そして、自分で自分にかけた”この気持ちは伝えてはいけない”という、呪縛からの解放感だけだった。
「―――久喜さんが好きです」
いまだかつて、男性に好意を伝えてこんな気持ちになったことなどない。
(本当に思っていることを好きな人に伝えるって、なんてすがすがしい気分なんだろう……!)
すっきりした心地で、私は久喜さんに抱きついた。
当たり前のように背中に回されるたくましい腕が、愛おしくてありがたくて、涙が出てしまう。
(このまま、時間が止まってしまえばいいのに……)
幸せな気分でひたすら彼に甘えていると、ゴホンとわざとらしく咳払いをされた。
何事かと見上げると、複雑な面持ちで久喜さんが私をジッと見つめている。
「遠藤、相談がある」
「……なんですか?」
改まって告げられる言葉に、まだ何か黙っていたことがあるのかと思い、ハッと身構えた。
「実は……」
はあ、と大きなため息を吐かれると、嫌な予感しかしない。
(もう十分なくらい、いろいろ説明してもらったと思うのに、まだあるっていうの……?)
ハラハラしながら彼の次の言葉を待つ。
何を言われても大丈夫なように、覚悟を決めた。
すると、思ってもみなかったセリフが、久喜さんの口から飛び出した。
「俺は今、君に猛烈にキスがしたいと思っているんだが」
言葉の意味を理解した途端、カーッと顔に血がのぼる。
「ちょ、な、何を急に!」
慌てふためく私を笑うでもバカにするでもなく、久喜さんはただ純粋に、私の意見を聞きたいだけのようだった。
「初めてのキスが会社の会議室というのは、女性からするとどうなんだろうか?」
「そそそそそ、そんなこと急に聞かれても……!」
「……泣かないでくれ」
そうしてすくい上げた私の涙を、そっと自分の唇に運んだ。
他の人がやったらキザにしか見えないそんな仕草にも、うっとりと見惚れてしまうばかりだった。
(恋って本当に人を盲目にさせるし、好きな相手を無限に美化させてしまう……)
そのことを、以前は怖いと感じてしまった。
自分が自分でなくなっていくようで、戻れなくなる前にブレーキをかけなければと、常に言い聞かせていた。
(でも……)
「私、こんなに1人の男性のこと、今まで思ったことなんてありません」
「遠藤……」
不思議と、恥ずかしいという気持ちは沸かなかった。
あるのはただ、やっと正直に伝えられるという、ホッとした気持ち。
そして、自分で自分にかけた”この気持ちは伝えてはいけない”という、呪縛からの解放感だけだった。
「―――久喜さんが好きです」
いまだかつて、男性に好意を伝えてこんな気持ちになったことなどない。
(本当に思っていることを好きな人に伝えるって、なんてすがすがしい気分なんだろう……!)
すっきりした心地で、私は久喜さんに抱きついた。
当たり前のように背中に回されるたくましい腕が、愛おしくてありがたくて、涙が出てしまう。
(このまま、時間が止まってしまえばいいのに……)
幸せな気分でひたすら彼に甘えていると、ゴホンとわざとらしく咳払いをされた。
何事かと見上げると、複雑な面持ちで久喜さんが私をジッと見つめている。
「遠藤、相談がある」
「……なんですか?」
改まって告げられる言葉に、まだ何か黙っていたことがあるのかと思い、ハッと身構えた。
「実は……」
はあ、と大きなため息を吐かれると、嫌な予感しかしない。
(もう十分なくらい、いろいろ説明してもらったと思うのに、まだあるっていうの……?)
ハラハラしながら彼の次の言葉を待つ。
何を言われても大丈夫なように、覚悟を決めた。
すると、思ってもみなかったセリフが、久喜さんの口から飛び出した。
「俺は今、君に猛烈にキスがしたいと思っているんだが」
言葉の意味を理解した途端、カーッと顔に血がのぼる。
「ちょ、な、何を急に!」
慌てふためく私を笑うでもバカにするでもなく、久喜さんはただ純粋に、私の意見を聞きたいだけのようだった。
「初めてのキスが会社の会議室というのは、女性からするとどうなんだろうか?」
「そそそそそ、そんなこと急に聞かれても……!」

