まだ半ば呆然とした心境で部屋を退出する。
そしてエレベーターに乗り込みながら、つい先ほど起きたばかりの事件を、1つ1つ順番に脳内でたどっていった。
(シュレッダーしながら考え事をしてたら、いきなり至近距離で『では今から食事に行こう。帰り支度をしたまえ』なんて誘われて……)
私はこれから、本当に彼と食事に向かうのだろうか?
あれはすべて私の妄想だったのではないだろうか?
現実離れした急展開に、まるで夢を見ていたような気分になる。
(高級焼肉店で割り勘……とかじゃないよね?)
ふとお金のことを考えた瞬間、急に現実味が増してきた。
(そ、そういえば! 今お財布にいくら入ってたっけ!?)
きちんと支払えなかったらどうしようと、バッグの中から財布を探す。
エレベーターに同乗している人にバレないよう、バッグから財布を出さずにこっそり中を確認した。
中には、1万円が2枚とわずかな小銭しか入っていない。
1階にあるATMは、生憎私のキャッシュカードには対応していない。
いざとなったらクレジットカードで支払うしかなかった。
カードが使えないお店など万が一の時には、久喜さんから預かったままになっている3万円を使おうと心に決め、私はいよいよ1階についてしまったエレベーターから降りる。
(いつか返そうと思って、いつも持ち歩いていてよかった……!)
ロビーの時計は、午後7時35分を指している。
大きな窓ガラスの向こうは、すでに夜の帳が訪れていたが、社内はまだまだ活気づいている時間帯だった。
(受付の人に退勤の挨拶をするなんて、久しぶりかも)
受付の勤務時間は交代制で午後8時までになっている。
にこやかに会釈をしてくれる受付嬢に「お疲れ様です」と返すと、私は正面玄関近くのカフェスペースで、久喜さんがやってくるのを待つことにした。
カフェの営業時間は終わっていたが、テーブルやソファはいつでも誰でも使える仕様なのがありがたい。
「はあ……」
1人掛けの柔らかなソファに身を委ねる。
(最近残業が当たり前になってたから、こんな時間に外に出られるだけでも嬉しい!)
仕事自体は嫌いではない。嫌いではないが書類に埋め尽くされた部屋で、仕事の会話しか交わさない上司と朝から晩まで2人きりというのは、やはりどこか息がつまる。
(まぁ……その上司とこれからサシで食事なわけだけど……)
どんなお店に連れて行かれるのだろうかとぼんやり想像して、自分の今の格好を改めて点検した。
ベージュのスプリングコートの下には、白い薄手のセーターとデニムのスカート。
足元はグレージュのバレエシューズだ。
キャメルの革のハンドバッグは、奮発して買ったブランド品だが、バッグだけ高級でも他がこれではお話にならない。
(デニムの時点で高級店はアウトだわ……)
そしてエレベーターに乗り込みながら、つい先ほど起きたばかりの事件を、1つ1つ順番に脳内でたどっていった。
(シュレッダーしながら考え事をしてたら、いきなり至近距離で『では今から食事に行こう。帰り支度をしたまえ』なんて誘われて……)
私はこれから、本当に彼と食事に向かうのだろうか?
あれはすべて私の妄想だったのではないだろうか?
現実離れした急展開に、まるで夢を見ていたような気分になる。
(高級焼肉店で割り勘……とかじゃないよね?)
ふとお金のことを考えた瞬間、急に現実味が増してきた。
(そ、そういえば! 今お財布にいくら入ってたっけ!?)
きちんと支払えなかったらどうしようと、バッグの中から財布を探す。
エレベーターに同乗している人にバレないよう、バッグから財布を出さずにこっそり中を確認した。
中には、1万円が2枚とわずかな小銭しか入っていない。
1階にあるATMは、生憎私のキャッシュカードには対応していない。
いざとなったらクレジットカードで支払うしかなかった。
カードが使えないお店など万が一の時には、久喜さんから預かったままになっている3万円を使おうと心に決め、私はいよいよ1階についてしまったエレベーターから降りる。
(いつか返そうと思って、いつも持ち歩いていてよかった……!)
ロビーの時計は、午後7時35分を指している。
大きな窓ガラスの向こうは、すでに夜の帳が訪れていたが、社内はまだまだ活気づいている時間帯だった。
(受付の人に退勤の挨拶をするなんて、久しぶりかも)
受付の勤務時間は交代制で午後8時までになっている。
にこやかに会釈をしてくれる受付嬢に「お疲れ様です」と返すと、私は正面玄関近くのカフェスペースで、久喜さんがやってくるのを待つことにした。
カフェの営業時間は終わっていたが、テーブルやソファはいつでも誰でも使える仕様なのがありがたい。
「はあ……」
1人掛けの柔らかなソファに身を委ねる。
(最近残業が当たり前になってたから、こんな時間に外に出られるだけでも嬉しい!)
仕事自体は嫌いではない。嫌いではないが書類に埋め尽くされた部屋で、仕事の会話しか交わさない上司と朝から晩まで2人きりというのは、やはりどこか息がつまる。
(まぁ……その上司とこれからサシで食事なわけだけど……)
どんなお店に連れて行かれるのだろうかとぼんやり想像して、自分の今の格好を改めて点検した。
ベージュのスプリングコートの下には、白い薄手のセーターとデニムのスカート。
足元はグレージュのバレエシューズだ。
キャメルの革のハンドバッグは、奮発して買ったブランド品だが、バッグだけ高級でも他がこれではお話にならない。
(デニムの時点で高級店はアウトだわ……)

