「疲れたんだ。もうずっと頑張っていたでしょ?たまには休みたくなっただけ。それだけ。本当にごめん」


深い意味はないんだよ。そう思って欲しかった。だって今の武ではどんなに考えても私の〝急な〟変化の理由なんて見つけられないだろうから。


「…そうか」


そんな私の言葉を聞いた武が苦しそうに私を見つめる。


「俺、ちゃんと強くなるからな」

「へ?」

「だから、ちゃんと強くなるから。今はお前より弱いかもしれねぇけどお前より強くなってお前が暴走したら俺が止める」

「はい?暴走?」

「おう」


話の流れがおかしい。先程より苦しげな表情が若干和らぎ、瞳に真剣さを宿らせる武を変なものを見る目で見る。

疲れたの話から何故私の暴走を止める話になった?


「…わた、いや、俺もうかれこれ10年くらいは暴走してないと思うけど」

「でもいつまた暴走するかわかんねぇだろ」

「…俺の実力的にそれはなくない?」

「可能性はゼロじゃねぇ」

「えぇえー?」


そんなこと言い出したら私は永遠的に暴走予備軍ではないか。
だが、武は私を茶化している訳ではないようで。
気がつけば苦しそうな表情から何か決意を固めたような強い意志を感じさせる表情に変わっていた。


「次は完膚なきまでに潰す」

「それって暴走した時だよね?もし万が一、そんなことはないだろうけど、私が暴走した時に完膚なきまでに、完璧に止めてくれるとかだよね?日常生活で息の根を止めようとか企んでないよね?」

「まあ、そんなところだ」

「どんなところよ!」


拳を強く握っての武の一言に不安になって早口で武に聞けば、武からとんでもなく適当な答えが返って来た。

まぁ、意味がわからないところも多々あるが、武と仲直りできたので、目的はとりあえずは果たせたことにしようと思う。