「…頑張りたくなかったんだ。もういいかなって」

「…は?」


おずおずと武の様子を見ながら口を開けば、武が予想通り鬼の形相でこちらを見て来た。

やっぱりー!やっぱり嫌だよねー!一緒に頑張ってきた私がいきなり手を抜くっていう裏切り行為をして。しかもその理由が、頑張りたくなかった、なんだもん!


「んだよ、それ。そんな理由で」


ビグビグしながら引き続き武を見つめていると、武は理解できないと言った表情を浮かべて、怒っていた。


「……俺たちは次期当主の中でも年下だからどうしても1年のブランクができる。だから年上の蒼や琥珀に負けないようにって、きちんと守護者に選ばれるようにってずっと頑張って来たじゃねぇか。もうちょっとだ。もう守護者になれる。なのに頑張りたくねぇって」

「違うよ。守護者にはなる。でももうなれるなら必要最低限でいいかなって」

「つまり妥協したんだろ?それを俺にした。裏切り行為だ」

「…うん。そうだと思う」

「何で。どうして急に…」


武は私を責め立てた後、今度は悔しい気持ちや悲しい気持ちなど様々な気持ちがぐちゃぐちゃになった表情を浮かべて私を見つめた。

そうだよね。武にとっては急な変化だよね。

彼は知らないのだ。私が今2度目を生かされていることを。私が辿った1度目の人生、そしてその人生の最期のことを。

考え方だって変わってしまう。今の私はきっと武が知っている私ではないだろう。